山形市 内科 橘医院 | 認知症患者さんへの対応 1

 まず、大切な5つのポイントを示します。なお、このページでは、主にアルツハイマー型認知症でみられる周辺症状について解説しています。

 

1)「認知症は病気である」と、家族全員が意識を共有する
 認知症は年のせい、周辺症状は元々の性格のため、などの「誤解」があると、患者さんに対して、家族の怒りや不快感が生まれやすくなります。

 

2)家族だけで抱え込まない
 周りに助けを求めましょう。ケアマネージャーさんに相談しましょう。周辺症状に家族だけで対応すると、遅かれ早かれ、介護体制は崩壊します。

 

3)「正しい」対応法は1つだけではない
 「こうしなければダメ」というものはありません。少しでも家族と認知症患者さんが穏やかに過ごせる方法こそ、「正しい」対応法です。

 

4)認知症について正しい知識・特徴を知る
 周辺症状である被害的、攻撃的、妄想的言動は、認知症という「病気」が言わせています。認知症についての知識を増やしてゆくと、家族が介護でイライラする事が少なくなります。その結果、患者さんの周辺症状が和らいできます。

 

5)3つの「ない」を実行する
 これは最後に示します。

家族の思い・対応と認知症患者さんの感じ方のズレ

 家族が良かれと思って行ったことが、かえって認知症患者さんを追いつめていることもあります。以下を参考にしてください。

 

家族の思い・対応
 A:ちゃんとして欲しいので、励ます
 B:無視する・叱る・なじる
 C:認知症の人は、わからない人
 D:わからないから、させない・やらせない

 

認知症患者さんの感じ方
 a:叱られている・怒られている
 b:いじめられている
 c:家庭内孤立・孤独
 d:役割・居場所の喪失

 

 

代表的な周辺症状と対応

病院・診療所に行こうとしない

 これは周辺症状ではないのですが、家族が最も困る現象の一つです。初期の認知症患者さんは、何となく「自分は認知症なのではないか」と感じ、不安になっています。その状態で家族から「認知症でないか、診てもらいましょう」と言われると、患者さんは不安が高じ、バカにされたように感じ、防衛反応から激しい拒否を示すことがあります。

病院・診療所に誘導するには

病院・診療所に誘導するには

 一度話がこじれると、家族だけで病院・診療所に患者さん本人を連れて行くのは「ほぼ無理」です。ここはプロの助けを借りましょう。

 

 かかりつけ医がいれば、はじめ家族だけ受診し、どうやって認知症診療に結びつけるか、相談してみましょう。医師は「血圧が高いので、脳卒中の検査をしましょう」など、本人の持病を元に、脳の検査すすめることもあります。かかりつけ医がいない場合、地域包括支援センターに相談してみましょう。


物盗られ妄想

物盗られ妄想

 認知症患者さんが、自分の大切な物やお金、財布などを、「家族が盗んだ」と言い、非難する言動です。患者さんは大切な物をタンスなどにしまうのですが、認知症のため、しまった場所を忘れてしまいます。そのため、いくらお金、財布を探しても見つかりません。

 

 本人(認知症患者さん)は自尊心のため「大切な物を無くした」とは思えず、ぱっと「家族が盗んだ」という妄想が浮かんだとき、それを妄想ではなく「事実」と思い込んでしまいます。盗んだ犯人にされるのは、多くの場合、本人を一番世話している家族(お嫁さんなど)です。


物盗られ妄想

 ただ、本人は、目の前にいる人と「盗まれた」という妄想を結びつけているだけです。特別な感情があって、目の前の家族を悪者にしているわけではありません。また、家族を攻撃するのはまずいという判断も、認知症のため出来ません。そして、犯人扱いされた家族がとても悩んでしまいます。

 

 患者さんにとっては「盗まれた」ことが、頭の中では事実となっています。家族中で「盗んでいない」と否定しても、認知症患者さんは「家族みんなで私を嘘つき呼ばわりする」と、怒ったり、興奮するだけで、問題は解決しません。


物盗られ妄想への対応

物盗られ妄想への対応

 物盗られ妄想では、犯人にされた家族がとても傷つき、精神的に参ってしまいます。そのままにしておくと、必ず介護体制が崩壊します。まずは他の家族で、非難された家族をケアしましょう。場合によっては認知症患者さんと非難された家族を、一時的に離す必要があります。

 

 患者さんは「自分が受け入れられない」と感じた時、防衛反応として興奮したり、怒ったりします。また家族が妄想に同調しても、患者さんは物盗られ妄想を信じ込んでしまいます。従って、家族が冷静な状態なら、認知症患者さんの言い分を、否定も肯定もせず対応しましょう。

 

 具体的には、「(大切なモノが)なくなったんだ、不思議だねぇ」、「(お嫁さんなどが)盗んだと思っているんだ、それは心配だよねぇ」などと声をかけられれば、理想です。また、「一緒に探しましょう」と言って、認知症患者さん本人にお金や財布を見つけてもらう手もあります。

 

 いずれにせよ、物盗られ妄想は繰り返しますので、ケアマネージャー、かかりつけ医に相談しましょう。

 

→認知症患者さんへの対応 2