認知症とは

認知症とは

認知症は、脳の病気です。脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなった結果、認知症が発病します。

 

そして患者さんは生活に支障が出るようになり、病状が時間とともに進行します。認知症は加齢による「物忘れ」と異なり、年をとると誰でもなる、という訳ではありません。

 

代表的な認知症として、以下のものがあります。
  1)アルツハイマー型認知症
  2)脳血管性認知症
  3)レビー小体型認知症
  4)前頭側頭型認知症(ピック病)

 

 詳しくは、以下のリンクを参考にしてください。
→公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」:認知症

 

ここでは、最も患者数の多い、アルツハイマー型認知症について説明します。

 

●物忘れと認知症の違い

 

年齢に伴う物忘れ
 A:出来事の一部を忘れる
 B:憶えているが思い出せない
 C:ヒントで思い出せることがある
 D:年を重ねても進行しにくい
 E:物忘れのみで生活に支障がない

 

認知症
 a:出来事のすべてを忘れる
 b:思い出せないというより憶えていない
 c:ヒントをもらっても思い出せない
 d:年を重ねると進行する
 e:物忘れなどにより生活に支障が出る

 

●認知症の経過


認知症の経過

認知症も他の生活習慣病と同様に、早期発見、早期治療が大切です。

 

この病気に対する正しい理解、適切な対応、上手な介護を早期から行うことにより、認知症の進行を遅らせたり、症状の安定を図ることが出来ます。

 

認知症の薬は、認知症を「治す」事は出来ません。しかし薬は、病状の進行を遅らせたり、認知症患者さんの意欲や関心の低下、不安、イライラ、興奮などを改善させ、患者さんと家族に安定と安らぎをもたらします。

 

●認知症患者さんの不安
認知症患者さんは、常に不安の中にいます。次ような場面を想像してみてください。

 

「あなたが眠りから覚めると、自分の知らない部屋にいます。その部屋には窓も時計もなく、周りにいるのも知らない人たちです。」

 

かなり不安になるのではないでしょうか。認知症患者さんは、程度の差はあれ、日常でこの不安を常に抱えています。


認知症の症状

●認知症の症状

 

 初期には、以下のような症状が出てきます。
  1)仕舞い忘れ、置き忘れが目立つようになる
  2)同じ事を繰り返し言う、訊いてくる
  3)薬の飲み忘れが目立つ
  4)昔のことは良く覚えているが、新しいことが覚えられない
  5)新しいことから忘れてゆく
  6)つり銭の計算が出来ない
  7)趣味などをやらなくなる

 

 病気が進行すると、以下のような認知症の症状が、はっきりしてきます。
  1)人、時間、場所がわからなくなる(見当識障害)
  2)家電や道具の使い方がわからなくなる
  3)食事など自分がしたことを忘れてしまう
  4)相手の言っていることを理解できなくなる
  5)家族に対し、お金や物を盗んだと主張する(物盗られ妄想)
  6)徘徊する、落ち着かない
  7)夜中に起きて騒ぐ(夜間せん妄) など

 

●認知症患者さんの特徴
認知症患者さんは、脳の働きは低下しますが「心」は残っています。そのため何か本人にとって嫌なことがあると、自尊心を守るため、感情的に反応してしまいます。

 

具体的には、家族が認知症患者さんの言動を否定したり、怒ったり、注意すると、患者さんは家族に対して、キツイ言葉を返したり、激怒したり、場合によっては暴力をふるうことがあります。

 

 このような、周辺の人との関わりの中で起きてくる認知症の症状を、「周辺症状」といいます。この「周辺症状」が、認知症患者さんの介護を困難にし、患者さんも家族も、困ってしまいます。


認知症患者さんに対応するときには

まず、大切な5つのポイントを示します。

 

●「認知症は病気である」と、家族全員が意識を共有する
認知症は年のせい、周辺症状は元々の性格のため、などの「誤解」があると、患者さんに対して、家族の怒りや不快感が生まれやすくなります。

 

●家族だけで抱え込まない
周りに助けを求めましょう。ケアマネージャーさんに相談しましょう。弱音を吐きましょう。認知症は「恥」ではありません。認知症になったのは、誰の性でもありません。周辺症状に家族だけで対応すると、遅かれ早かれ、介護体制は崩壊します。

 

●「正しい」対応法は1つだけではない
「こうしなければダメ」というものはありません。少しでも家族と認知症患者さんが穏やかに過ごせる方法こそ、「正しい」対応法です。

 

●認知症について正しい知識・特徴を知る
周辺症状である被害的、攻撃的、妄想的言動は、認知症という「病気」が言わせています。認知症についての知識を増やしてゆくと、家族が介護でイライラする事が少なくなります。その結果、患者さんの周辺症状が和らいできます。

 

●3つの「ない」を実行する
これは周辺症状のページで示します。

家族の思い・対応と認知症患者さんの感じ方のズレ

家族が良かれと思って行ったことが、かえって認知症患者さんを追いつめていることもあります。以下を参考にしてください。

 

家族の思い・対応
 A:ちゃんとして欲しいので、励ます
 B:無視する・叱る・なじる
 C:認知症の人は、わからない人
 D:わからないから、させない・やらせない

 

認知症患者さんの感じ方
 a:叱られている・怒られている
 b:いじめられている
 c:家庭内孤立・孤独
 d:役割・居場所の喪失